フクモン 二次創作 2014年02月23日 とある街中の通りにて。カイジは走っていた。というのも、バイトに遅刻しそうだからである。何とかバイト代で生活を繋いでいるだけに、クビになるわけにはいかないのだ。だが、そういう時に限って巻き込まれてしまうもの。「っと、すいません!」曲がり角で誰かとぶつかり、相手はモンスターボールを落としてしまった。その衝撃で開いたらしい。ボールの中に入っていたモンスターが逃げ出してしまった。チラッと後ろ姿を見たカイジだが、珍しい物だということは一目見ただけでもわかった。そんな珍しい物を逃がしてしまった…という罪悪感から、すぐにその場から逃げるという選択肢がとっさに浮かんだのだが、ぶつかった相手が相手なだけに、逃げることが出来なかった。スーツにサングラス、後ろに部下が控えていれば、わかるだろう…所謂、ヤクザと呼ばれる人種。「どうしてくれる?」「…すいません…けど俺、急いでるんで…」「こっちはヤツが逃げ出したんだ!今すぐ探し出して此処に連れてこい!」「そんな無茶な!第一…俺、逃げたのがどんなヤツか、知らないんですけど…」「そんなこと知るか!良いから探してこい!」仕方なくカイジは探し始めた。だが、手掛かりが全く無いのだ。とりあえず、モンスターが逃げていった方に歩きながら、バイト先に連絡をいれる。怒られながらも何とか了承を得ることができた。さて…と気持ちを切り替える。これから探すにも手段がない。だが、このままではバイトをクビになってしまうため、とりあえず手当たり次第に走って探し回る。第一、逃げたモンスターの事をなにも知らないのだ。探しようがない。唯一の手掛かりと言えば、逃げる際に見た後ろ姿くらい。暫く探したが、一向に見つけることが出来ない。このままでは埒が明かないと、仕方なく、休憩がてらに策を考える事にした。路地裏に入ると、突然袖を引っ張られる。「アンタが俺を逃がしたんでしょ?」それは、先ほど逃げたモンスターのようだった。ぱっと見13歳位の子供だが、よく見れば尻尾と耳が生えている事に気付く。いきなり探してたモンスターが目の前に現れて、カイジは驚きのあまり暫し固まった。「ねえ、聞いてる?」「あ、ああ…別に、逃がしたくて逃がした訳じゃねーけど…」「ふーん、そう」(そう、あれは…不可抗力って奴だ!バイトに遅刻しそうなときに、わざわざコイツを逃がすとか…有り得ない…!俺は元々コイツを知らないわけだし…逃がすも何も接点が無い!)そこまで考えて(突っ込んで?)ふと、カイジは気付いた。「そう言えば…お前、逃がしたのが俺だって、なんで知ってんだ?」そう、カイジは逃げた後ろ姿を一瞬だが見た。だが、モンスターからすれば振り返る余裕なんか無いはず。故に、モンスターはカイジを知らない筈だ。「そんなの、ずっと見てたからに決まってる」「え…?」「あのオッサンに叱られてたよね。で、謝りながらどっかに電話してた」「…そんな始めから?お前、逃げ去ったんじゃなかったのか!?」「気配消して戻ってくるくらい簡単」「って事は、探し物は近くにあったと?」「そうだね」「しかも、俺が必死に探し回ってた事を楽しく見学してたと…?」「そうなるね」この事実を聞いたカイジは、疲れ果てたようにその場に座り込んだ。心なしか眼が潤んでいる。(俺はコイツの掌の上で踊らされてたってことか…!ちくしょう!……けど、コイツが気まぐれ起こさなかったら…俺は今頃……未だに走り回ってるわけだし……なんか納得できねえけど…その点だけは感謝するべきなのか?)自問自答していたカイジだったが、ふと、思い出したように質問する。「そう言えば…なんで戻ってきた?いや…俺の前に現れた?そのまま逃げることも出来たはずだ」「(…空気が変わった)ククク…アンタほんとにおもしろいな…捕まえに来といて逃げろなんてさ…まあ、そういうところに興味が湧いたんだけどね」「はあ?い…意味がわからん……!」「あとは、面白そうだから」「……そんな理由…!」「俺の勘は当たる」モンスターの気まぐれで何とか見つけることができたカイジだが、その分気力と体力を大幅に削られたらしい。だが、ふと本来の目的を思い出した。「って、こんなことしてる場合じゃねえ!そっちから来てくれて、助かったぜ!!」カイジはモンスターの腕を掴むと、先ほどぶつかった男のもとに向かう。急がなければ、バイトをクビになってしまう。だが、モンスターは抵抗した。「やだね、あんなオッサンよりあんたの方が良い」「文句言うな!こっちは時間がないんだ!」「何で?」「バイト何だよ!もう遅刻してんだ!」「ふーん…」モンスターはそれ以降大人しく付いてきた。いきなり大人しくなったモンスターを不審に感じたが、都合が良かったので連れて歩く。だが、ずいぶん遠くまで探しに来たらしい。二人共無言で黙々と歩くこの状況。耐えられなくなり先に口を開いたのは、カイジ。「なあ、そういやお前、名前はあるのか?」「赤木しげる。まあ、ピカロって呼ばれてるけど」「…ピカロ?」「どっかの国で悪い男って意味なんだって」「へえ…悪い男ね…想像つかねえな。ま、見た目ガキだから仕方ねえか」「で、あんたは?」「あー…伊藤開司だ。カイジでいい」「カイジさん…ね」何かを確かめるようにカイジの名前をつぶやくしげる。改めてお互い自己紹介を済ませると、なぜだか親近感が湧いた気がするから不思議なものだ。「えーっと…ピカロってのがしっくりこねえな…しげるで良いか?」「構わないけど」「なんであのオッサンの所にいたんだ?」「んー…知りたい?」「そりゃあ気になるけどよ…別に、話したくないならいい」 PR